3月, 2022年
“つながる”ことの効果
NHKテキスト きょうの健康2022年4月号の特集は「延ばそう!健康寿命」でした。その特集の中では孤立対策も取り上げていました。
最近の研究で、孤立が心身へのストレスとなり、健康状態に悪影響を及ぼすことがわかってきました。日本では、この問題に 対処するため、2021年に「孤独・孤立対策担当大臣」が新たに任命されるなど、孤立と健康の関係が注目されています。
孤立して孤独を感じているとき、脳には大きなストレスがかかります。このストレスは、身体的な痛みなどを感じたときにかかるストレスにも匹敵するもので、心拍や血圧を上昇させることにつながります。
これが脳や心臓の血管に負担をかけ、積み重なれば脳卒中や心臓病の引き金となります。孤立している人とそうでない人で、病気の発症リスクを比較すると、孤立している人のほうが、およそ1.3倍も脳卒中や心臓病を発症しやすいと報告されています。
配信 Willmake143
心をケアするハンドセラピー
元看護師の山本千鶴子さんは10年ほど前、「幸齢者ハンドセラピスト」の肩書で活動を始めました。
高齢者施設に赴き、利用者の手にそっと触れながらたわいもない話をする活動を週刊朝日2022年3月25日号が紹介しています。
「手は最も抵抗感なく触らせてもらえるパーツです。リラックスするうち、うなり続けていた方が静かになったり、普段しないような思い出話を始めたり。会話の内容を施設に伝えて、介護計画に生かしたこともありました」とその効果について山本さんは語っています。
浜松医科大学の鈴木みずえ教授(老年看護学)は、高齢者のケアにおいてハンドセラピーが果たす役割は大きいと話しています。「認知症患者の不穏や攻撃性を和らげる効果がある。高齢者施設のスタツフが実践したところ、健康状態の把握と早めの処置につながり、体調を悪化させて入院する利用者が減った例もありました」。
シニアだけでなく、ストレスを抱える人のケアにも有効だそうです。
がん患者やICUの入院患者の場合、不安や不眠が改善して鎮静剤の量が減った、呼吸や脈拍が安定した、という報告があるそうです。
近年は、企業による社員のメンタルヘルス対策や、不登校の子のサポートに使われるケースも出てきたといいます。鈴木教授は「手を触られているときは、お互い向き合ってアイコンタクトがとれる体勢になる。足や背中を触られるよりも『あなたが大切』というメッセージをダイレクトに受け取れる」と話していました。
配信 Willmake143
ペット信託
コロナ禍でペットを飼う人が増えています。犬や猫を飼うことは心身に良いと考えられる一方、健康に不安を抱えがちな高齢者には飼いにくい事情もあります。飼い主の「もしも」に備える「ペットのための信託」を2022年3月20日付の朝日新聞が紹介していました。
「ペットのための信託」は、家族の一員として愛するペットのため、あらかじめ老後の飼育資金を確保したり積み立てたりするとともに、飼い主が病気や長期入院、死去といった「もしも」に遭遇した時に、安心して暮らす場を確保する仕組みです。
NPO法人「ペットライフネット」(大阪市)は、8年前に「わんにゃお信託」を始めました。信託会社や定期預金を活用する五つの仕組みを用意しています。
将来の飼育費用を定期預金しておくのが「定期」コース。まとまった飼育資金や遺言書を準備すれば、比較的費用が抑えられます。
「信託」では資金管理を信託会社に任せられますが、手数料は必要です。ペットを飼い始めたばかりで、飼育費用をこれからためる人には「積み立て」もあります。
いずれの場合でも、飼い主が飼育困難になれば、ペットの所有権はNPOに譲渡され、NPOが里親へとつなぎます。
里親はフードなどの基本的な費用の支払いを受けることになります。
大阪府で一人暮らしをする女性(70)は昨秋、生後3ヵ月の小型のミックス犬「ねね」を飼い始めました。
小型犬の平均寿命は約14年、最期まで飼うには不安がありました。
「1年後にどうなっているかわからんよ」と娘に勧められてNPOに相談、ペットのための信託契を結ぶことにしたそうです。
配信 Willmake143
面会制限の教訓
読売新聞には、「医療ルネサンス」というコーナーがあります。2022年3月15日から6回にわたって取り上げられたテーマは「面会制限の教訓」でした。
コロナ禍で、病院や高齢施設は「面会制限」を余儀なくされました。患者や家族、ケアを支える人たちも、それぞれに重い負担を負いました。どんな教訓を得て、未来につなげるか。医療現場の専門家5人に尋ねて取材しています。
コロナ禍は、日本の医療が抱える様々な弱点を「見える化」しました。面会制限が明らかにしたのは、患者さんの「意思決定」を支える基盤の弱さです。
葛西中央病院(57床)は、ほぼ3日ごとに1人を看取る病院です。高齢者施設や大病院にいて、最後の時間を自宅近くで過ごすために転院してくる患者さんが多いそうです。そういう患者さんを多く受け入れている同病院の土谷院長はこう語っています。
「親が老い衰えていく過程を飛び飛びにしか見ていない家族は、実際に会うと、その変化に愕然とします。「きちんとケアされているのか」と疑念もわきます。
親が亡くなった後、その死を実感できない人もいます。患者さんと家族の、そして、面会に来る家族と医師との「対話」の機会を明らかに減りました。
その結果、患者さんのQOD(クオリティー・オブ・デス、死の質)が落ちているのではないか、と心配です。
こうした状況を打開しようと当院では、家族と率直に話し合いました。患者さんにとって最善な過ごし方は何か、一緒に考えましょう。
本人が決めるのが基本ですが、難しければ私たちで向き合っていくしかありませんと、真摯に伝えます。
面会制限の環境では、認知症が進んだり、その症状が表れたりする。せん妄という幻覚などの意識障害も出やすくなる。そうした様々なリスクも、納得してもらえるまで説明します。
面会制限下だからこそ家族と共有したいのは、患者さんが老いていく過程を受け止める「心構え」です。
親の死にばかり関心を向けるのではなく、そこに至るまでの今までの時間に思いを寄せてもらえる環境を作りたい。それが見えにくくなっているからこを、一緒に心構えをつくっていきたいですね」。
配信 Willmake143
入院の保証人がいない
歳を重ねるにつれ医療機関にお世話になる可能性は大きくなります。
核家族化で「頼れる身内」が近くにいない高齢者も、人院時には連帯保証人や身元引受人が求められます。
いざというときに備え、元気なうちから代替手段を確認しておくことを2022年3月5日付の日経新聞が紹介していました。
保証人が確保できずに困ったら、医療機関内に在籍するMSW(医療ソーシャルワーカー)や近隣の社会福祉協議会、地域包括支援センターに相談しましょう。
成年後見人制度の利用支援や民間の高齢者サポートサービスについて説明してくれるほか、本人が望めば、相談員が直接医療機関と交渉してくれる場合もあります。
配信 Willmake143