6月, 2021年
噛む力
女性月刊誌・婦人画報には「100歳佳人へのウェルネスレッスン」というコラムがあります。同誌2021年7月号のレッスンタイトルは「噛む力」です。担当医は前・鶴見大学歯学部探索歯学講座教授の花田信弘先生です。
花田先生は「健康寿命を考える人生のなかで最初に発症するのが歯周病と虫歯です。
これらの口腔内の病気の発症は、栄養バランスと大きく関係しています。
炭水化物過多、タンパク質不足の食生活は、歯周病、虫歯のリスクを高めることがわかっています。
さらに歯周病、虫歯で噛む力が低下すると硬いものが食べづらくなり、炭水化物過多とタンパク質不足が進むため、肥満や糖尿病などの生活習慣病に移行します。まさに負のスパイラルです」と話しています。
タンパク質不足の低栄養状態は、骨粗鬆症や全身の筋肉量が落ちるサルコペニア、要介護手前のフレイル(加齢に伴う心身の活力低下)へつながるともいわれています。
世界10万人を対象にした栄養分析でも、総エネルギーの60〜65%を超える炭水化物過剰摂取の人は、心疾患による死亡リスクが高いというデータもあります。
さらに、90歳でこんにゃくが噛める女性は100歳まで生きる人が多く、噛めなかった女性は1000日以内に亡くなっていたとする調査研究を、岩手県歯科医師会が発表しています。
まさに噛む力の維持が寿命と関連することを裏付けた結果です。
花田先生は「人は、噛めなくなると生きられなくなるということです。また歯周病菌とアルツハイマー型認知症との関連も明らかになっています。
歯周病菌のP.ジンジバリス菌の毒素が血液を通して脳内に侵入し、アルツハイマー型認知症の原因のひとつ、アミロイドβの蓄積につながっていることもわかっています」と語っていました。
タンパク質、ビタミンD、カルシウム、抗酸化物質を摂りましょう
歯周病を予防し、咀嚼力を維持するために特に必要な栄養は、タンパク質、ピタミンD、カルシウム、抗酸化吻質です。
いずれも歯のためだけでなく全身の骨や筋肉を維持し、骨粗鬆症やフレイル予防にも重要。
エストロゲンの分泌が低下する更年期以降は、特に意識しましょう。
配信 Willmake143
人は口から老化する
サンデー毎日の2021年6月20日号に 「人は口から老化する オーラルフレイル万全対策」 という記事が載っていました。
寝ている時間や椅子に座りっぱなしの生活が続くと、足腰の筋力は落ちやすい。歩く速度が遅くなり、階段を上るのがつらく、すぐ疲れて休みたくなる。
高齢になると筋肉量も落ちてくるため、あっという間に動けない体になってしまう。これを「フレイル」(脆弱)といいます。
加齢とともに心身の活力が低下し、生活機能が障害され全身が衰える状態のことです。
スポーツ庁では、コロナ禍の運動不足への警鐘として「健康な高齢者が2週間、家の中で動き回らないでいると脚の筋肉量は3.7%減少するという報告があり、これは約3.7年分の老化に相当します」と指摘しています。
口の機能にも同じことが起こる危険があると記事には書かれています。
「口の機能低下であるオーラルフレイル」は脚の筋力ほど急激ではありませんが、噛めない状態を放置する、会話や発声の機会が少ないなど機能を使わないことでいつの間にか低下していきます。
オーラルフレイルは進行すると「食べこぼし」「飲み込めない」「滑舌が悪い」などが日常的になっていきます。
これが「口腔機能低下症」の症状で、噛みやすいものばかり食べるようになり、食に偏りが出てきます。
特に「低栄養」というたんぱく質不足の状態に陥ると、体を作る基となる栄養が足りないので、全身のフレイルを悪化させます。
進行すれば要介護状態となり、死亡リスクも高まります。
フレイル、オーラルフレイルとも、老化の終着駅ではありません。
衰えに早く気づいてケアやトレーニングを行えば、健康な状態に戻る可能性があることもわかっています。
まずは、「口腔機能低下症」の一覧(下記の表)をチェックし、自分の状態を確認してみてください。
配信 Willmake143
軽度認知障害とは
日常生活に支障が出るほどではないが、同世代の平均に比べて物忘れが多い。そんな状態を「軽度認知障害(MCI)」と呼びます。2021年6月19日の日経新聞がMCIの早期発見などを紹介していました。
タレントの名前や読んだ本の題名が思い出せない。こうした固有名詞の記憶が怪しくなるのは加齢とともに誰にでも起こりうることです。
ただ「昨夜の食事に何を食べたか」「先週誰に会ってどんな話をしたか」など自らの行動に関する内容、いわゆる「エピソード記憶」を忘れてしまうことが増えたら要注意。認知症の前段階かもしれないからです。
こうした加齢による物忘れと認知症の境界にある状態がMCIです。
認知症専門の和光病院(埼玉県和光市)の今井幸充院長は「日常生活に大きな支障はなく、認知機能の検査もほぼ正常範囲。
しかし記憶力などが明らかに年齢の平均より劣っている状態と考えてほしい」と説明しています。
今井院長は「MCIの4割以上がアルツハイマー型認知症に移行する。何より早期発見が重要だ」と指摘しています。
アルツハイマー型認知症は現状では完治できません。
ただMCIの段階で発見して対策をとれば、進行を遅らせることも可能になってきたということです。
進行を遅らせるためには生活習慣の改善も欠かせません。
曰々の食事でも炭水化物の過剰摂取を避け、野菜や青魚を中心にビタミン類やタンパク質をしっかり摂るよう呼びかけています。
よくかんで食事することが脳を活性化し、MCI予防にもつながります。食後の歯磨きで口腔環境をきれいに保っておくほか、定期的な歯科受診も勧めています。
配信 Willmake143
おしりのかゆみ
お尻の穴がかゆくなる「肛門そうよう症」についての記事が2021年6月12日の日経新聞に載っていました。
肛門そうよう症は肛門や周辺の皮膚にかゆみを感じる状態の総称です。
JCHO東京山手メディカルセンター(東京・新宿)の山名哲郎・大腸肛門病センター長は「肛門の病気といえば痔が代表的だが、肛門そうよう症も珍しいものではない」と話しています。
大阪肛門科診療所の佐々木みのり副院長は、「肛門を清潔にすればかゆみは治ると思つている人は多いが、排便時に温水洗浄便座で洗いすぎたり、トイレットペーパーで拭きすぎたりするのは逆効果だ」と強調しています。
皮膚の表面を覆う皮脂、皮膚を健康に保つ常在菌を過度に取り除いてしまい、バリア機能が低下。細菌やウイルスなどの病原体が侵入しやすい状態になるのだそうです。
肛門にかゆみを感じたときもむやみにかくのは避けることが大切です。排便時は温水洗浄便座の使用を控え、トイレットペーパーで拭くときもこすらないようにします。
佐々木副院長は「ペーパーはテニスボール大にふんわりと丸めて、肛門にやさしく当てるようにして拭くといい」と勧めています。
山名センター長は「人浴時にせっけんを使ってゴシゴシと肛門を洗ったり、アルコールを含むウエットティッシュなどで拭いたりするのは控えてほしい」と注意を促しています。
配信 Willmake143
健康手抜きご飯
2021年5月30日に集英社から「鎌田式 健康手抜きご飯」という料理本が出版されました。著者は諏訪中央病院名誉院長の鎌田實先生です。本の“はじめに”はこう書かれています。
僕は、今、72歳。
2011年に東日本を襲った大震災の直後から、福島県南相馬市への定期的な訪問を始めた。
被災地で生活する人たちが健康でいられるように「健康長寿ごはん」を管理栄養士チームとともに開発し、提供を続けている。
さらにここ数年は、佐賀県の「がんばらない健康長寿実践塾」で高齢者の健康増進のための活動を行っている。
塾生に対して、健康長寿でいるための食生活や運動に関してアドバイスをし、みんなに実践してもらう。
その効果を継続的にデータとして収集している。
健康管理の「真ん中」にあるのは、やはり毎日の食事である。
大事なのは、毎日「ちゃんと食べる」ということ。手間をかけなくて大丈夫、手抜きでもかまわない。
簡単で同じような献立が続いても問題ない。
とにかく、必要な栄養が過不足なく摂れる「おいしい」食事を、おっくうがらずに毎日食べる。
それが僕たちの健康を、ひいては将来の楽しい毎日を守ってくれる。
今日食べたものが、明日の体をつくる。「元気で長生きできる体」は毎日の食事の賜物だ。
この本では、健康に長生きできる「簡単」で、もちろん「栄養たっぷり」かつ「おいしい」メニューをたくさん紹介している。
これまで自分で料理をしたことがないという男性はもちろん、長年ずっと主婦として台所に立ち続けてきた女性にも、“上手に手抜き”のアイデアとしてぜひ活用していただきたい。
手抜きで、おいしい。
手抜きだから、料理が楽しい。
おいしいから、毎日の食事が楽しい。
食事を楽しんでいるうちに、健康な体がつくられていく。
「手抜きごはん」で、“元気に長生き”人生を楽しもう!
配信 Willmake143