11月, 2021年
必要なのは「中ぶらりん」を持ちこたえる力
作家で精神科医の帚木蓬生さんは、世の中に立ちこめる不安な空気に押しつぶされないためにも、ある「能力」を身につけることの重要性について、婦人公論2021年11月24日号でこう述べています。
「コロナ禍による生活の変化は、私のクリニックを訪れる患者さんの心や体にもさまざまな影響をおよぼしました。
孤独や不安を訴えたり、気分が落ち込んでやる気が出なくなる、いわゆる「抑うつ状態」に陥ったりする人が増えたと感じます。
特に中高年の女性たちは、移動を制限されたことによって、介護施設にいる親と面会できなかったり、子どもや孫、友人と会う機会を失ったりして、「寂しい」と口にする人が少なくありません。
抱えている思いを話す相手がいなければ、不安は消えないのです。
こうした出口の見えない非常事態のときこそ、医師として「ネガティブ・ケイパビリティ」という考え方を、みなさんにぜひ知ってほしいと考えています。
ネガティブ・ケイパビリティとは、「どうにも答えの出ない、対処できない事態に耐える力」という意昧です。
解決できない事柄の理由を性急に求めず、‶中ぶらりんの状態を持ちこたえる″という考え方です。
本来「ケイパビリティ」とは、才能や解決処理能力などポジティブなものを指す言葉ですが、この場合はまったく逆で、答えを出さないことに重きを置いています。
人間の脳はもともと「知りたい、わかりたい」という性質を持っているため、わけのわからないものに直面すると脳が苛立ち、とりあえず意昧づけをして理解しようとするのです。
その「わかりたい」という欲望を制御しながら、結論が出ないまま持ちこたえる力こそが、ネガティブ・ケイパビリティなのです。
私はネガティブ・ケイパビリティの考え方とともに大切にしていることがあります。それは3つの「薬」です。
いつもあなたのことを見ているけれど、こんなに問題を抱えながら本当によくやっていますね、という「目薬」。状況を見守り、必要に応じてサポートしていく方法です。
2つめは、人間の小さな脳みそでいくら考えても答えが出ないことがある、それは日々が解決してくれるという「日薬」。
時間をかけて何とかしていくうちに、何とかなります。3つめは、「がんばって」とは決して言わずに、「めげずに、よくここまで米ましたね」と声をかける「口薬」です。
こう言うと患者さんは安心するみたいですね。
さらに、日々の暮らしを忙しくすることをすすめます。一通り新聞を読み、日記をつけ、町内会の役職を引き受けるなど、忙しくして暇を作らないことは大事です。
悩む時間がないから、忙しい人は病気を口にしません。
悩みや不安があっても焦らず、悩めばいい。ハラハラ、ドキドキの状態もまた楽しんでみてはどうでしょうか。
大局に任せれば、自然と出口が見えてきます」。
配信 Willmake143
人生100年時代の資産延命
人生100年時代では、自立した生活を送れる期間を指す「健康寿命」に加え、「資産寿命」にも注目が集まっています。
資産が尽きるまでの期間のことです。長生きの結果、資産寿命が先に終わりを迎えては大変なことになります。
資産の「延命」をどうするかについての記事が2021年11月23日の読売新聞に載っていました。
超高齢社会を楽しく過ごしていくには、健康であると同時に、お金の心配がないことも大事です。
そこで、長生きしても老後資金が枯渇しないようにと、「資産寿命」を把握し、それを延ばすことへの関心が高まっているのです。
退職後の生活費を、フィンウェル研究所代表の野尻哲史さんは勤労収入、年金収入、資産収入の三つで賄うと説明しています。
資産収入とは、現役時代からつくってきた資産を引き出して老後の生活費に回すことを指します。
給料や年金だけでは生活費が足りず、資産収入をつぎ込んでいけば、いずれゼロになる。これが資産寿命が尽きた状態です。
まずは年金や資産がいくらあるか、生活費がいくらかかるかを把握します。
その上で、人生100年時代に合わせ、100歳まで生きる想定で資産寿命が持つかを計算しましょう。
持たないなら、収入を増やすか生活費を減らして延命させる必要があります。収入増としては、長く働き続けることが効果的です。
もう一つは資産運用。リスクがありますが、投資先の分散などをすれば、資産が減っていくスピードを抑えることが可能になるかもしれません。
日本人の個人金融資産と、個人が保有する土地などの資産の合計は3000兆円以上あり、その6割超は60歳以上が保有しているとみられます。
老後が心配だからと、多くの高齢者がお金を使わない生活を送れば、日本の消費は低迷します。
自分にも世の中にもメリットがある暮らしを続けるために、資産寿命についてよく考えてみてください。
配信 Willmake143
ワクチン3回目なぜ必要?
新型コロナウイルスのワクチンの3回目接種についての記事が2021年11月22日の日経新聞に載っていました。
ワクチンを接種すると、人間の体内で「中和抗体」が作られます。中和抗体はウイルスの感染力などを抑えるタンパク質で、これによりウイルスヘの感染が抑えられます。
しかし、接種してから時間がたつと、体内の中和抗体は減ってしまうことが報告されています。
すでに2回接種していても、半年以上が過ぎると、ワクチンの効果が一部薄れてしまうのです。3回目の接種をすれば、中和抗体は大きく増えることがわかっています。
冬は空気が乾燥し、室内での活動も増え感染リスクが高まる傾向にあります。流行の第6波への備えを怠ることはできません。
マスク着用など、基本的な感染防止策は引き続き必要です。そのうえで高齢者や、基礎疾患があってリスクの高い人などは3回目の接種が望ましいと考えられます。
ただ、ワクチンによって活性化される体の防御システム(免疫)は、中和抗体だけではありません。
2回目までの接種でできた中和抗体は薄れても、ウイルスを退治する免疫細胞などの働きは残っており、全くの無防備にはなりません。
抗体が減っても、入院や重症化を防ぐ効果は持続するという報告もあります。
1〜2回目接種では発熱や体のだるさを感じた人も多かったと思います。ただ、重篤なものはまれでした。
ワクチンメーカーのデータでは、3回目も同じ程度だとみられます。
1〜2回目と同様、接種は義務ではありません。
接種するかどうかは副反応のことやみなさんの体調、生活環境などを考えて決めてください。
配信 Willmake143
LOH症候群
コロナ禍により、体重が増えた、食事量が増えた、という人が増えました。
運動不足から体重が増加したうえに、食事の量が増え、このままでは生活習慣病の恐れがあると医者から警鐘を鳴らされた人もいるでしょう。
●どうしてうつになるのか?
●どうして在宅勤務で食事の量が増えたのでしょうか?
そのカギとなるのがテストステロンです。
このテストステロンの急減で起こるLOH症候群について解説した新書が2021年11月10日にKADOKAWAから出版されました。
著者は順天堂大学大学院の堀江重郎教授です。
「ハツラツとした男性」に好感を持つ人は男女問わず多いと思います。どういう要素が「ハツラツさ」という印象をもたらすのは、まず元気で、エネルギッシュであること。
さらに自分の意見をしっかり出せる、公平公正である、他の人を思いやる、実行力がある、常に積極的に行動する、といったことです。
実はこの「ハツラツさ」にはホルモンが深くかかわっています。
そのホルモンとはずばり、テストステロン。いくつかある男性ホルモンの中でもメインとなるものです。
最近の研究から、テストステロンは心身の健康やメンタル面にも大きな影響を与えることがわかってきました。
健康を保つのに欠かせないことに加え、テストステロンは社会で活動するうえでも重要なホルモンなのです。
女性は閉経すると女性ホルモンと呼ばれるエストロゲンが大幅に減り、心身にさまざまな不調が起きてきます。いわゆる、更年期障害です。
男性も同じようにテストステロンが急激に減ることで、心身に深刻な症状が起こるようになります。
これがいわゆる男性更年期障害、医学的には「LOH症候群」と呼ばれる病気です。
日本語では「加齢男性性腺機能低下症候群」と訳されます。
女性の更年期障害は閉経を迎える50代前後に起こりますが、男性更年期障害であるLOH症候群は、30代以降の男性なら誰にでも起こる可能性があります。
LOH症候群になると、まず「ハツラツさ」が失われます。やる気がない、不誠実、ずるい、不親切、内向きといった性格になります。
さらに疲れやすい、昼間に眠い、他人の目が気になったり、他人の批評に心が折れてしまったりすることも多くなります。
この本で、LOH症候群にならないための方法やLOH症候群の最新治療が紹介されています。
配信 Willmake143
HbAlcは健康のバロメーター
国内の糖尿病患者は予備軍も含めると約2000万人。この病気の特徴は、ほとんど自覚症状のないまま進行し、大血管障害など命に関わる重篤な合併症を引き起こすことです。
糖尿病月間を迎えるこの時期、健診で血糖の重要指標である「HbAlc」を確認し、先手の予防策に取り組みましょうという記事がサンデー毎日2021年11月7日号に載っていました。
長引くコロナ禍は、日常生活やビジネスはもちろん、健康面にも多大な影響を与えています。
一般社団法人日本生活習慣病予防協会が、全国の医師と一般生活者に対して行ったインターネット調査によると、半数以上の医師が患者の「HbAlcの数値が悪化している」と実感し、8割が「コロナ禍で糖尿病リスクが高まっている」と回答しています。
その一方で、一般生活者の6割以上が、HbAlcのことを「知らなかった」と答えており、HbAlcが基準値を超えた場合のリスクを理解している生活者は「わずか1割」にとどまっているのが現状です。
HbAlcは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビン(Hb)に、糖が結合したもの(糖化ヘモグロビン)の割合を示す数値で、過去1~2ヵ月の血糖の平均的な状態を表しています。
筑波大内分泌代謝・糖尿病内科の矢作直也准教授は、「もしこの数値が高めであるなら、一定期間高血糖状態が続いていたと考えられます。HbAlc値5.6%以上なら要注意。高血糖状態が続くと、糖尿病はもちろん、動脈硬化のリスクもあるので、高めと診断されたら、すぐ血糖コントロールに取り組むべきでしょう」と警告しています。
食後の血糖値の急上昇を防ぐには、食べる順番も大切です。
野菜や海草、きのこなど食物繊維を多く含む食材を最初に食べることで、日々の血糖値の上昇を抑え、HbAlc値も上がりにくくなることが報告されています。
「よく噛んで食べる」ことも重要です。50歳以上を対象とした研究で、咀嚼力が低下すると、血糖コントロールが悪化する可能性が指摘されています。
HbAlcを健康のバロメーターと考えて、運動と食事の改善に取り組んでください。
配信 Willmake143